高齢者住宅新聞に連載記事開始!『介護✕金融DX~介護革命のススメ~』第2回
前回は、介護業界におけるIT化の意義と推進のポイントに触れました。
今回は、「介護DX(デジタルトランスフォーメーション)」で目指すゴールについてです
◆なぜ今、「介護DX」なのか
なぜ今かは、言うまでもなく介護人材不足の加速です。2025年に介護人材は必要人数245万人に対し38万人不足(15%)します。人手に頼るやり方が通用しない時代がすぐにやってくるということです。
DXとは、平たく言えば、『今までのやり方にこだわらず、最初にゴールを決め、その形の実現に必要なデジタル技術を導入して、新しいやり方を作り、事業としての競争力を維持・強化すること』です。もっとも重要な “ゴール”を、それが誰のための何かをはっきり定義し、“今までのやり方にこだわらない”ことがその入口です。
介護業界の主役である現場職員が輝くための手段、それが「介護DX」です。
◆ゴールへの道『介護革命』
「介護DX」で目指すゴールを、介護職員のために、職員が輝ける介護現場を作り、そこで“真の介護”を行える時間を最大化することと定義します。そのためには、肉体的、精神的、生理的な負荷のかかる現場作業を段階的にシステムにやらせていくことで、この道筋を描くことが重要です(図)。
今までできなかったことが、AIや新たな機器を用いてできるようになっていきます。事務作業以外の現場作業の削減ができる。“人とシステムが役割分担すること”で、職員による福祉の時間を減らし、介護の時間を増やせば、働き方改革を進めつつ、現場のやりがいを高めることも可能です。
介護DXのゴールは業務削減でも、IT化でもありません。それらは現場の“新しいやり方”を行う手段であり、ゴールは“新しいやり方”で “新しい現場”を“現場自ら”が作ることです。ただし、業務のやり方の変更には現場の大変な苦労を伴います。現場がそれをやり切るための精神的支柱が、現場のための未来の介護への道筋『介護革命』ということです。
◆今の限界を乗り越える目標設定の例
「介護DX」の開始に際し、最初に設定すべき目標の例を挙げましょう。例えば入居型施設であれば、これまでの業務を、現在の人員配置上の対応高齢者数をプラス0.5~1.0、すなわち2.5:1の施設なら、3~3.5:1で運営することを目指します。人の余裕=時間の余裕を作り出すことです。システムに任せることは任せ、人でなければできない福祉の作業は今のまま残し、各職員の仕事の分担や、人の動き、指示命令系統を変えることなどで実現していくことになります。
次回は、この2回の話を踏まえて、「介護DX」促進の主役である現場職員の役割ついて書きたいと思います。